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Research

感情AIと人間のインタラクション

人とモデルが向き合う場をどう設計するか。自己省察、対話、共在の問題。

取り組んでいること

感情AIが社会に入っていくとき、人とモデルのあいだに新しい関係が生まれる。自己省察を支えるのか、判断を委ねさせるのか、共在の相手になるのか——その界面の設計は、技術精度とは別の論理を必要とする。本領域では、対話設計・自己省察支援・感情を介した HCI といった、人とAIの関係性そのものを問い直す研究が立ち上がりつつある。

分かってきていること

本領域は現在進行中で、対話AIの自己省察支援機能や、共在インタフェースの設計原則が立ち上がっている。感情を介したHCIにおいては、AIが「判断者」ではなく「鏡」や「対話相手」として機能する設計が、自己理解を深める方向に寄与するという仮説が形成されつつある。詳細は順次公開予定。

Research notes

研究の物語

感情AIが社会に入っていくとき、人とモデルのあいだに新しい関係が生まれる。これまでの計算機との関係は、命令を入力し結果を受け取るという道具的関係が主だった。しかし感情AIは、利用者の内面を読み取り、利用者に応答し、利用者の感情に影響を与える存在として、より深い関係性を構築する可能性を持つ。本領域は、人とAIが感情を介して向き合う「場」をどう設計するかという問いを中心に据える。技術精度の向上とは異なる論理、すなわち「関係性そのものの設計」が研究対象となる。

人と感情AIの関係には、複数の異なる位置取りが考えられる。第一は「自己省察支援者」としての位置で、AIは利用者が自身の感情を理解し言語化する手助けをする。第二は「判断委譲先」としての位置で、利用者はAIの判断に従って行動する。第三は「共在の相手」としての位置で、AIは判断や支援ではなく、ただそこに居る存在として機能する。それぞれの位置取りは、異なる設計原則と倫理的含意を持つ。本ラボは、この三つの位置取りのうち、特に「自己省察支援者」と「共在の相手」という、AIの非介入性を尊重する方向を重視する。

自己省察支援とは、AIが利用者に「答え」を与えるのではなく、利用者自身が「気づき」に至る過程を支援する設計原理である。心理療法のロジャーズ派(クライエント中心療法)の伝統では、治療者は答えを示さず、クライエントの語りを反射・要約・明確化することで、クライエント自身の自己理解を深める。感情AIが同様の役割を担う場合、AIは判断者ではなく「鏡」として機能する。利用者の感情表現を反射し、自身の感情を客観化する助けを提供するが、最終的な解釈と意味づけは利用者本人に委ねる。これは前述の「感情主権」概念の実践的応用でもある。

共在のインタフェース(co-presence interface)は、より新しい設計領域である。常時起動して、利用者と空間を共有し、必要なときだけ静かに応答する存在として AIを設計する。スマートスピーカーやアンビエントコンピューティングの延長線上にあるが、感情AIの場合は単なる音声応答ではなく、利用者の感情状態に応じた距離感の調整が鍵となる。落ち込んでいるときは寄り添い、集中しているときは退き、迷っているときは選択肢を提示するといった、感情に応じた振る舞いの調整が設計対象となる。これは感情を介したHCI(Human-Computer Interaction)の最前線課題である。

本領域は現状ではプロジェクトが立ち上がりつつある段階にあり、研究論文として公開済みのものは限られている。しかし問題意識は明確である。感情AIの社会実装が進むほど、人とAIの関係性そのものを設計する必要が高まる。技術精度を追求する他領域とは異なり、本領域は「精度の高いAIをどう人と共存させるか」という、設計と倫理の交差点に位置する研究を展開していく。本ラボの他領域、特に倫理哲学領域における感情主権概念と、応用開発領域における心理支援設計の双方を、実装として結ぶ役割を担う。