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Column

AIエージェントが「なぜその行動をしたか」を説明できる業務設計とは

誰が・なぜ・何を扱うかという3軸でAIエージェントの業務プロセスを形式的に記述するAGOフレームワークが提案された。論理的健全性を保ちながら業務台帳・コンプライアンス対応・ワークフロー自動生成を可能にする設計の、経営企画・業務改革担当への示唆。

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エージェント・目標・オブジェクトの3軸が業務フロー図として整理されているフラットイラスト

こんにちは。Affectosphere Group の井下です。

AI エージェントを業務に導入し始めた組織から、こんな問いが増えてきています。

「このエージェントが何をしているか、監査で聞かれたときにどう説明すればいいのか」——。

メールの分類、社内承認の補助、データ入力の自動化。便利さは明らかです。ただ、エージェントが業務の中で「何のために何をしているか」を、人間が理解できる形で記述しておかないと、変更管理・コンプライアンス・責任帰属のすべてが曖昧になります。

2026 年 6 月に arXiv で公開された研究(Mohammad Azarijafari、Luisa Mich、Michele Missikoff;arXiv:2606.15291)は、この問いに応えるフレームワーク「AGO」を提案しています。エージェント(Agents)・目標(Goals)・オブジェクト(Objects)の 3 軸で業務プロセスを形式的に記述し、AI エージェント時代のビジネスプロセス管理(BPM)を再設計しようとするものです。


今日の 3 点

  1. AGOフレームワークは「誰が(Agents)・なぜ(Goals)・何を扱うか(Objects)」という 3 軸で業務プロセスを形式的に記述し、論理的健全性と完全性を保証する。
  2. 業務プロセス知識ベース(BPKB)として構造化クエリ・インクリメンタル更新・ワークフロー自動生成を可能にし、純粋理論ではなく実装を念頭に置いた設計になっている。
  3. 大企業における「AIエージェント業務台帳」の基盤として、ガバナンス・コンプライアンス・変更管理への直接応用が可能。

① AGOフレームワークとは何か

従来のビジネスプロセス管理(BPM)では、業務の「何を・どう実行するか」を BPMN などのフローで表現してきました。これは人間が実行主体である前提で設計されたものです。

AI エージェントが実行主体の一部になると、問題が生じます。エージェントは目標を持ち、複数の選択肢の中から行動を選ぶ。その「なぜその行動を選んだか」が従来のフロー記述では見えません。

AGO フレームワークはこの欠如を埋めます。

「Agents(誰が)」は業務タスクを担うエージェントまたは人間の主体を指します。「Goals(なぜ)」はその主体が何のためにその行動をとるか、つまり目標・意図の層です。「Objects(何を)」は業務で扱われるデータや成果物です。

この 3 軸を数学的基盤の上に組み合わせることで、業務プロセスを形式的かつ機械可読な形で記述できます。論理的健全性(soundness)と完全性(completeness)を保証する設計になっているため、記述が矛盾を含まず、かつ必要な情報を欠落させないことが保証されます。


② 知識ベースとして「問い合わせ・更新・自動生成」を可能にする

この研究の実装面での特徴は、AGO フレームワークを「業務プロセス知識ベース(BPKB: Business Process Knowledge Base)」として構築した点です。

BPKB は単なる記述のアーカイブではありません。3 つの機能を持ちます。

一つ目は構造化クエリです。「このエージェントが担っているタスクの一覧は?」「この目標に関係するオブジェクトは?」といった問い合わせを、形式的に定義されたクエリとして実行できます。監査や変更管理の際に「このエージェントは何をしているか」を即座に答えられる状態になります。

二つ目はインクリメンタル更新です。業務プロセスが変わったとき、変更部分だけを安全に更新できます。更新によって知識ベース全体の整合性が壊れないかを、フレームワークが論理的に保証します。

三つ目はワークフロー自動生成です。定義された Agents・Goals・Objects の組み合わせから、実行可能なワークフローを自動的に生成できます。これにより、業務設計者がフローを一から書く作業を省力化しながら、記述の論理的な正しさを担保できます。

純粋な理論提案ではなく、実際の BPM 実装に向けた設計になっている点が、この研究の大きな特徴です。


③ AIエージェント業務台帳として活用する

では現場での活用方法を考えてみます。

最も直接的な応用は、「AIエージェント業務台帳」の構築です。

AI エージェントの展開が広がる大企業では、「どのエージェントが・何のために・どの業務データを扱っているか」を一覧できる台帳が必要になります。AGO フレームワークはこの台帳の記述言語として機能します。BPMN などの既存ツールと組み合わせることで、AI エージェントの「なぜ」の層を明示的に記述できます。

想定部署は、経営企画・業務改革部門と、AI エージェントを既存業務フローに統合する SI・ERP ベンダーです。

規制対応という観点でも有効です。EU の AI Act を含む各国の AI 規制は、自動化された意思決定に対する説明責任を求める方向に動いています。「エージェントが何のためにその行動をとったか(Goals)」を記録として残せる設計は、コンプライアンス文書化の基盤になります。

KPI として追うべきは「AIエージェント起因の業務変更時の影響範囲特定にかかる時間」です。AGO フレームワークに基づいて BPKB を整備しておけば、あるエージェントの動作を変更したときにどの業務フローに波及するかを、構造化クエリで即座に把握できます。変更管理コストの削減指標として測定できます。

コンサルティングファームの業務設計チームにとっても有効なツールです。クライアント企業の AI 導入プロジェクトで、エージェントの責任所在と業務範囲を明示化する文書化標準として AGO フレームワークを採用することで、後工程の監査対応コストを下げられます。


「なぜ」を記述できる組織が強い

AI エージェントが業務に入ることで、組織の内側に「なぜその行動をしたか誰も説明できない自動化」が増えていきます。

それは短期的には効率化に見えますが、監査・コンプライアンス・変更管理のコストとして後から返ってきます。AGO フレームワークが提供しているのは、効率化と説明可能性を両立するための設計言語です。

AI エージェントを導入する組織は、フローの設計と並行して「Goals の記述」を業務標準に加えることを検討してみてください。

では!


参考論文

  1. Mohammad Azarijafari, Luisa Mich, Michele Missikoff (2026). A Formal Framework for Declarative Agentic AI in Business Process Analysis. arXiv preprint.

※ 本記事は一部 AI により執筆されており、間違った情報が含まれる恐れがあります。