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感情で画像を変える時代がきた ── valence × arousal の2次元で広告が「あなた仕様」になる
気分や感情状態に合わせて、見るたびに違うビジュアルが生成される。学習不要なフレームワーク「EPIG」が、感情ドリブンのパーソナライズド広告・動的バナーを現実にしつつあります。
こんにちは。Affectosphere Group の井下です。
画像生成 AI は今、ものすごいスピードで進化しています。
でも、これまでの使い方は基本的に「プロンプトを入れると画像が出る」というものでした。 生成結果は入力した言葉に依存していて、「見る人の感情状態」は考慮されていない。
arXiv で公開された研究(Emna Othmen, Mohamed Yassine Landolsi, Lotfi Ben Romdhane)が提案する EPIG というフレームワークは、この前提をひっくり返します。
ユーザーの感情状態を2次元(valence × arousal)で捉えて、それをプロンプトに変換し、感情に合わせた画像を生成する。しかも、追加学習なし。既存の画像生成モデルをそのまま使えます。
今日はこの研究の面白さと、広告・UX・クリエイター業界への示唆を書きます。
今日の3点
- 価値: EPIG は感情状態をプロンプトに変換することで、学習不要でパーソナライズド画像生成を実現する。
- 成果: 覚醒度(arousal)誤差を12〜14%削減。感情的な正確さが数値で改善されている。
- 広告・UX への示唆: 「今の気分に合ったビジュアル」を自動生成できるなら、動的バナーやパーソナライズド広告の作り方が根本から変わる。
① valence と arousal って何?
感情研究の世界では、感情を2次元で表現するモデルが広く使われています。
横軸が valence(感情価)。ポジティブかネガティブか、快か不快かの軸です。 縦軸が arousal(覚醒度)。活性化しているか、落ち着いているかの軸です。
たとえば「興奮・喜び」は valence 高・arousal 高。 「リラックス」は valence 高・arousal 低。 「怒り」は valence 低・arousal 高。 「悲しみ・落ち込み」は valence 低・arousal 低。
この2軸の組み合わせで、人間の感情状態をかなりの精度でカバーできると考えられています。
EPIG はこの2次元モデルを「画像生成への入力」として使います。 「あなたが今ここにいる感情座標」から、プロンプトを組み立て、画像を出す。
これは単純に見えて、実は大きな発想の転換です。
② EPIG の仕組み ── 感情をプロンプトに「翻訳」する
EPIG のコアは、構造化プロンプト拡張(structured prompt expansion)という考え方です。
感情状態(valence と arousal の値)を受け取ったら、それを「どういう画像であるべきか」を記述するプロンプトに変換するルールを持っています。
たとえば arousal が高い状態なら、色の彩度が高い・コントラストが強い・動きのある構図が選ばれやすくなる。valence が高い(ポジティブ)なら、明るいトーン・自然光・開放的な空間が選ばれやすくなる、みたいな感じです。
この変換は学習が不要です。既存の画像生成モデル(例えば Stable Diffusion などの拡散モデル)に、感情情報を組み込んだプロンプトを渡すだけで動く。
そして実験では、このアプローチが arousal 誤差を12〜14%削減したと報告されています。 感情に合った画像を生成する精度が、数値として改善されているということです。
③ 広告・UX・クリエイター業界への示唆
ここからが、ビジネスサイドとして面白いところです。
感情ドリブンの動的バナー広告
デジタル広告の世界では、ターゲティングはすごく細かくなっています。 でも、バナーの「見た目」は基本的に固定です。
EPIG の発想を使えば、ユーザーの感情状態(たとえばウェアラブルデバイスや行動ログから推定されたもの)に応じて、同じ商品でも「今の気分に合ったビジュアル」で訴求できる可能性があります。
興奮している人には鮮やかで動的なバナー。リラックスしている人には落ち着いたトーンのバナー。同じ商品を、感情に合わせた文脈で見せる。
コンバージョン率への影響は、予感としてはかなり大きいと思います。
パーソナライズド UI ── 気分でインターフェースが変わる
ECサイトやメディアアプリで「ユーザーの気分に合わせてトップページのビジュアルが変わる」という体験は、今のところほとんどありません。
でも技術的には、感情推定 + EPIG みたいなパイプラインで実現できる話です。
朝のニュースアプリが、今日のユーザーのストレス状態に応じて画像トーンを落ち着かせる。音楽アプリのサジェストビジュアルが、今の気分に同期する。そういった体験設計が現実味を帯びてきています。
クリエイター支援 ── 「雰囲気をプロンプトで言語化」する手間が消える
クリエイターにとっても面白い話です。
「なんとなくこういう感じ」「もっと落ち着いた雰囲気で」という感覚を言語化して、精度の高いプロンプトを書くのは、実は慣れていないと難しい作業です。
感情2次元で「だいたいこのあたりの気分」と指定できれば、プロンプト設計の負荷が下がる可能性があります。感情をインターフェースにした画像生成、という方向性です。
「学習不要」というのが、実は一番大事
EPIG の特徴の中で、実務的に一番重要なのは「既存モデルへの追加学習が不要」という点だと思います。
画像生成モデルのファインチューニングは、計算コストが高いし、モデルがアップデートされるたびに再学習が必要になります。
EPIG のアプローチは、感情情報をプロンプト空間に変換することで、モデルに手を加えずに感情対応を実現します。モデルが変わっても、プロンプト変換ロジックをそのまま使いまわせる。
これはプロダクト開発の観点からも、保守コストの観点からも、現実的な選択肢として使いやすいと思います。
感情という次元が、画像生成に加わった
最後に少し大きな視点で。
これまでの画像生成は「何を描くか」(コンテンツ)と「どう描くか」(スタイル)が主な入力軸でした。
EPIG は「誰が見るときに、どんな気分か」(感情状態)という3つ目の軸を加えています。
これが当たり前になると、画像コンテンツの体験は「静的なもの」から「その時の自分の感情に反応するもの」に変わっていく予感がします。
広告、UI、クリエイティブ制作……それぞれの現場でこの変化がどう使えるか、引き続き追いかけていきます。
では!
参考論文
- Emna Othmen, Mohamed Yassine Landolsi, Lotfi Ben Romdhane (2026). EPIG: Emotion-Based Prompting for Personalised Image Generation. arXiv preprint.
※ 本記事は一部 AI により執筆されており、間違った情報が含まれる恐れがあります。